はじめに:長文が書けるかは、手順の問題になりやすい
報告書、提案書、議事録、方針文、依頼メールの要約、NotionやObsidianのノート……。仕事で書く「長い文書」を書いているうちに「論点がズレる」「同じことを繰り返している」「読む側が疲れる」と感じたことはありませんか。
これは、才能の有無というより 「思考の置き場所」が足りていない ことが原因になりやすいです。頭の中だけで流れを管理しようとすると、長い文書ほど破綻しやすくなります。
この記事では、テーマ→アウトライン→分割→統合 を手順として固定し、迷子になりにくい文章の作り方と、Obsidian と Cursor の使い分けをまとめます。
要点まとめ(先に結論)
- 大きなテーマを、まず1文で固定する。
- 次に アウトライン(見出し) を先に並べて分割する。いきなり本文を書かない。
- 各パーツは 「導入/話題/まとめ」 の型でつなぐ。唐突な始まり・終わりを防ぐ。
- Obsidian で素材を分割して置き、Cursor で読み手目線に整えて統合する、という役割分担が相性がいい。
- 実例をAIに渡すときは、機微情報を架空化・一般化して線引きする。
PGP(Personal Growth & Productivity)としての位置づけ
PGPは、機微情報の線引きを前提に、知的労働を「続く形」に整えるブログです。
今回の話は、報告書・提案書・議事録・メール要約・Notion/Obsidianのノート など、仕事で書く長い文書に共通して使える「迷子を減らす手順」の一例です。
1. まず「テーマ」を固定する(1文で言えるか)
書きながら考え始めると、あちこちに枝が伸びて、何が言いたい文章か分からなくなります。
その前に、言いたいことを1文にまとめる ところから始めます。
- 「この文章で伝えたいことは、〇〇ということだ」と口にできるか。
- タイトルが自然に決まるか。逆に、タイトルが決まれば、捨てるべき話題もはっきりする。
テーマが2つ以上あると感じたら、1本の文書には1テーマ に絞るか、別の文書に分ける判断をした方が、読み手も書き手も楽になります。
2. アウトラインで分割する(見出しを先に並べる)
いきなり本文を書き始めない、というのが次のルールです。
見出し(アウトライン)を先に並べる ことで、「今どこを書いているか」が常に分かる状態にします。
- 見出しは 「読む人の疑問の順」 に並べる。自分が書く順ではなく、読む人が知りたい順が基本です。
- 例:提案書なら「背景→課題→提案内容→期待される効果→懸念と対策→次の一手」のように、読む人の頭の中の問いに沿って並べる。

アウトラインが 「自分がやる作業の順」(資料を集める→下書きを書く、など)になっていると、読み手には伝わりにくいです。読み手が知りたいのは「背景は?」「課題は?」「では提案は?」という疑問の順なので、見出しは「読んだ人が次に何を考えたいか」で並べ直します。
3. 各パーツは「導入/話題/まとめ」で書く(流れを切らない)
見出しごとのブロックでも、唐突に始まって唐突に終わる と、読む人は「今、何の話をしているんだっけ?」となりがちです。
各パーツを、次の3つでそろえると、流れが切れにくくなります。
- 導入:この見出しでは何を話すか(1〜2文)。
- 話題:本論。具体例や根拠。
- まとめ:ここまでで言ったことと、次に何につなぐか(1〜2文)。
全体の構成も、大きな「導入/話題/まとめ」 の入れ子になっていると、一貫した流れになります。
4. 統合:つなぎを作り、重複を消す(読み手目線)
分割して書いたあとは、統合の段階で「読み手目線」に整えます。
- つなぎ:「前の段落では〇〇と言った。次に、△△について述べる。」のように、前後を1文でつなぐ。
- 重複の削除:同じことを別の見出しで繰り返していないか確認し、1か所にまとめるか削る。
- 順番の見直し:並べ替えた方が分かりやすい段落がないかチェックする。
ここは、自分で読み返すだけだと盲点になりやすいので、Cursor に「つなぎを補って」「重複を指摘して」と頼む と、客観的な整形に役立ちます。
5. Obsidian / Cursor の使い分け(私の運用)

Obsidian と Cursor を、役割で分けて使うと、長い文書の「分割」と「統合」がしやすくなります。
- Obsidian
- テーマとアウトラインをメモし、見出しごとにノートやブロックに分割して書く。
- リンクで後から辿れるので、「あの話はあのノートに」と思考の置き場所が明確になる。
- 議事録の要点、依頼メールの下書き、Notion 用の下書きなど、部品の置き場として使う。
- Cursor
- ある程度まとまった原稿を渡し、見出し構造の整理・文体の統一・冗長な部分の削除・つなぎの追加 を依頼する。
- 「論理の穴がないか」「重複がないか」をチェックしてもらう読み手目線の整形に使う。
- 例:議事録の要点 → 報告用の要約 → 依頼メールの返信文、という流れを、Obsidian で下書きし、Cursor で整える。
「書く場所」を Obsidian、「整える場所」を Cursor と固定しておくと、迷子になりにくく、同じ手順を繰り返しやすくなります。
「ある程度自分で文章を書いてから、AIで整える」のメリット
ちなみに、「ある程度自分で文章を書いてから、AIで整える」という手順は、結構重要かもしれません。2025年に MIT から “Your Brain on ChatGPT” というタイトルの論文が発表されています。
この論文では、実験の途中で「AIを使わず自力で書いていたグループ」に、後から「AI(LLM)」を使わせる検証(Brain-to-LLM)を行っています。その結果、次のようなポジティブな傾向が見られました。
- 脳の活性化と記憶:自力で書いていた参加者が後からAIを使用した場合、高い記憶想起(memory recall)を示し、後頭頭頂葉や前頭前野といった脳領域の活性化が見られました。
- 検索エンジンのような適度な関与:このグループの脳活動は、AIに頼り切りの状態とは異なり、検索エンジンで能動的に情報を探しているときの脳の状態に近い傾向を示しました。
逆に、最初からAIを使っていたグループが、後から「自力で書く」ことを求められた場合(LLM-to-Brain)には、脳の接続性(アルファ波・ベータ波)が低下し、課題に対して「過小関与(under-engagement)」の状態に陥ることがわかりました。
つまり、最初に「自分の頭を使う」プロセスを経ておけば、その後にAIを使っても脳は「サボる」ことなく機能し続けやすい一方で、最初からAIに頼ると脳が怠ける癖(認知的負債)がつき、自力で書く能力まで低下する恐れがある、という知見です。

6. 失敗しやすいポイント
- テーマが2つ以上ある
1本の文書に詰め込みすぎると、読む人も「結局何が言いたいの?」となりやすい。1文書1テーマを心がける。 - アウトラインが「作業手順」になっている
書き手の作業順ではなく、読む人の疑問の順に並べ直す。 - 導入とまとめが同じことを言っている
冒頭と最後で同じ文をコピペしただけ、にならないように。まとめでは「だから次に〇〇を考えるといい」など、一歩先を示すと締まりがよくなる。
7. 安全(機微情報の線引き)
実務の報告書や議事録を例に出すときは、実例をそのままAIに渡さない ことをおすすめします。
- 架空化・一般化:固有名詞を落とす、数値や日付をぼかす、具体的な案件名は「A社の事例」のように置き換える。
- AIに渡すとき:要約や整形の対象は「論点だけ残した要約」にし、機微な詳細は含めない。
社内固有の事例をそのまま貼り付けて「整えて」と頼むと、情報漏れのリスクが高まります。線引きは「機微情報は渡さない」を前提にしてください。
明日から試すチェックリスト
- テーマを1文で書く:「この文章で伝えたいことは〇〇だ」とメモする。
- 見出しを5つ並べる:読む人の疑問の順に。いきなり本文は書かない。
- 各見出しに「導入/話題/まとめ」を1行ずつ書く:中身は後から埋めればよい。型だけ先に置く。
ここまでできたら、Obsidian で見出しごとにブロックを分けて書き、ある程度たまったら Cursor に「つなぎを補って」「重複を指摘して」と頼んで統合してみてください。
参考リンク
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