デスクワーク疲れを解消!心理学×労働衛生ガイドラインで快適な作業環境を整える方法

アイキャッチ:デスクワークの環境 デスクの環境整備

在宅勤務、リモートワーク、オンライン授業…

私たちはいま、これまで以上に「デスクに向かう時間」が増えています。

そして、こんな悩みを抱えていませんか?

  • 夕方になると頭がぼーっとする
  • 同じ単純作業の繰り返しで集中力がもたない
  • 目や肩、腰がつらい
  • テレワーク環境がなんとなく整っていない

実はこれ、環境と心理のミスマッチが引き起こしている可能性があります。

この記事では、厚生労働省が公開している「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に心理学の視点を掛け合わせて、快適で集中できるデスクワーク環境の整え方を具体例つきで解説します。


VDT作業とは?──まずは基礎から押さえよう

私たちが日常的に行っているパソコン業務やスマートフォンの操作は、実は「VDT作業」と呼ばれるものに該当します。

VDTとは「Visual Display Terminals(表示装置)」の略で、ディスプレイを用いた作業全般を指します。

具体的には以下のような作業が含まれます。

  • パソコンでの資料作成やデータ入力
  • タブレットでの設計・編集作業
  • コールセンターでのオペレーション
  • 在宅ワークやテレワークでのオンライン業務 など

VDT作業は視覚への負担が大きく、長時間の作業によって「目の疲れ(眼精疲労)」「肩こり」「腰痛」「集中力の低下」など、心身両面にさまざまな影響を与える可能性があります。

こうした健康リスクを防ぐために、日本では厚生労働省が「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定し、作業環境の改善を推奨しています。


1. 【照明と採光】光の質が脳の働きを左右する

心理学の研究でも、光の種類や明るさは集中力・気分に影響を与えることが分かっています。

特にVDT作業では、目への負担を最小限にする工夫が必須。

ガイドラインで推奨されている基準

ガイドラインでは照明に関して、作業環境が十分に明るいことだけでなく、照度の差をなくすことを推奨しています。具体的には、

  • ディスプレイ画面の照度:500ルクス以下
  • 書類・キーボードの照度:300ルクス以上
  • 周囲の明るさを均一に:明暗差をなくすことで目の疲れを防止
  • グレア*対策:間接照明や反射防止フィルムでまぶしさをカット

というのが、デスク環境として推奨されます。

*グレア(glare)は、視覚的な不快感や物の見えづらさを引き起こす「まぶしさ」を指します。その原因は様々で、光源の高すぎる輝度や、周囲と画面や照明との輝度の差も含む概念ですが、デスクワークでは「モニター画面への光の映り込みなどの反射」をさして使われることが多いようです。

調光機能付きのLEDライトやディスプレイを使う

デスクワークでこのような光の調整を行うためには、デスクライトやディスプレイを以下の観点で選ぶことが大切です。

  • デスクライト:ディスプレイに映り込まず、調光機能がある
  • ディスプレイ:アンチグレアで調光機能がある
    • 日中は昼光色(青白い光)で集中モード
    • 夜間は電球色(オレンジ系)でリラックスモード → この切り替えだけでも脳のスイッチが切り替わりやすくなります。

個人的には、デスクライトもディスプレイも、調光に使えるリモコンがついてくるBenQ製品が気に入っています。特にデスクライトは、デスク上のスペース確保、画面の映り込み防止の点で、モニター上につけるタイプのものがおすすめです。


2. 【姿勢と配置】「なんとなくの姿勢」が疲労を加速する

デスクワークでは、長時間の座位、さらに言えばその際の不適切な姿勢が、腰痛をはじめとした全身の疼痛の原因となります。

それだけではなく、筋肉の持続的緊張=ストレス状態につながり、交感神経を過剰に刺激し、イライラや焦燥感を高める要因に。当然、集中力低下の原因にもなります。

そのため、デスクワークにおいて正しい姿勢をとるということは非常に重要なポイントになります。

「正しい姿勢を取ろう」と意識することは非常に重要になりますが、そのような意識を保ち続けることには当然限界があります。そのため、重要なことは、「正しい姿勢を維持しやすい環境の調整」です。

正しい姿勢のためのデスク配置のチェックポイント

正しい姿勢を維持しやすい環境を作るためには、デスクと椅子、ディスプレイの配置を調整することが重要です。そのためのポイントは、

  • モニターの高さ:上端が目線と同じか少し下
  • モニターの位置:距離は40~70cm
  • デスクの高さ:肘が自然に90度になる位置
  • 椅子の高さ①:足裏がしっかり床につくこと
  • 椅子の高さ②:膝裏が座面で圧迫されない

になります。

デスクと椅子の調整

昇降デスク+エルゴノミクスチェア

デスク選びをする前に、「座位で肘が自然に90度になるデスクの高さ」を把握しておく必要があります。まずは椅子に座って、足裏が床にしっかりつき、座面で膝下が無理に圧迫させない状態で座れる高さを調べましょう。この高さのデスクを選ぶことが重要になります。

その点で言えば、電動昇降デスクはずっと座って作業することを避け、立ち作業も気軽にできるということ以上に、座位でのベストフィットな高さに微調整できることは大きなメリットです。ただ、昇降デスクを選ぶ際には、この自分にとってベストフィットな高さにすることができるかを事前に確認しておきましょう。

また、モニターと目の距離が40-70cm取れるようにするためには、デスクにある程度の奥行きが必要です。少なくとも60cmは欲しいところですね。

椅子も「足裏が床にしっかりつき、座面で膝下が無理に圧迫させない状態で座れる高さ」に微調整できることは必須。その上で、個人的には、腰痛予防のためのランバーサポート、ランバーサポートが適切に使えるよう深く座っても膝裏が圧迫されない座面の奥行き肘を適切な角度で置くことができるアームレストが揃っていることが重要なポイントになります。いわゆる「エルゴノミクスチェア」はとても重要ですね。

  • 椅子選びのポイント
    • 座面のたかさ: 足裏が床にしっかりつき、座面で膝下が無理に圧迫させない状態で座れる
    • 座面の奥行き: 深く座っても膝裏が圧迫されない
    • ランバーサポート: 腰痛予防に
    • アームレスト: 肘を適切な角度で置くことができる高さ・位置
  • デスク選びのポイント
    • 天板の高さ: 椅子に座って、肘が自然に90度になる高さ
    • 天板の奥行き:モニターと目の距離を確保できる、最低60cm以上

3. 【空気と温度】五感からくる集中妨害を防ぐ

デスクワークをする環境に関して、「事務所衛生基準規則」というものも定められています。この中では、労働安全衛生法に基づいて、デスクワークに従事する労働者が使用する事務所の環境管理に関する基準が設けられています。その中で、温度や湿度、空調による気流といった空気に関する基準が定められています。いろいろ細かい基準がありますが、一般的に管理・確認できる基準を紹介します。

最適環境の目安

  • 室温:18~26℃
  • 湿度:40~70%
  • 気流:0.5m/秒以下
  • 二酸化炭素濃度0.5%以下

これらの目安を維持することを考えると、湿度温度計や二酸化炭素モニターで環境をモニタリングしつつ、換気や空調設備を利用し、特に空調の気流が直接体に当たらないようにすることが重要になります。


4. 【テレワークへの応用】自宅でも集中できる空間を

「家だとなんとなく集中できない…」という人も多いですが、それは環境設計の問題です。

テレワーク環境整備のコツ

  • 十分な作業スペースを確保(物理的にも心理的にも)
  • 整理整頓 → 雑多な空間は視覚的ストレスの原因
  • 転倒防止など安全性も意識

十分なスペース、というのは意外と重要になります。これも「事務所衛生基準規則」の規定として、「事務室の気積は、「設備の占める容積及び床面から四メートルをこえる高さにある空間を除き、労働者一人について、十立方メートル以上」と定められています。高さ4メートルとすると、一人当たり2.5平方メートルのスペースは確保すべき、となっています。自宅で作業する場合は、上述の照明、デスクや椅子、空調に加え、十分なスペースがあるかも検討事項になりますね。

集中できる環境の構築

在宅ワークのさらに大きなハードルは、集中を見出すものが周囲にどの程度あるか、になります。自宅には仕事のための資料だけでなく、娯楽のための道具が多くあるはずです。テレワークを行う場合、自宅内でそのような仕事以外の刺激をどのように遠ざけるかを考えましょう。


まとめ|環境設計=心理設計。「集中できる空間」は自分で作れる

環境が整うと、脳のワーキングメモリに余裕が生まれます。

それにより、私たちは「考える」ことに集中できるようになります。

そして、同じ単純作業の繰り返しを少しでも自動化・簡略化することで、私たちはより高次な思考や創造的な作業に脳のリソースを使えるようになります。

今すぐできることから、1つずつ整えていきましょう。

それが結果的に「時短」と「集中力UP」の両立につながります。

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